桜が咲く時まで、生きていたい

________宗一郎side ________

姫奈を見送って、小牧先生と二人になるとようやく先生は口を開いた。

「私の部屋に行こうか」

私の部屋、というのは小牧先生の診察室ということだ。

先生についていき、診察室の中に入る。

移動の間、先生は一言も話さなかった。

先生と対面する形で座ると、先生がやっと口を開いた。

「これ、この間の検査結果だ」

一見、数値に問題はないように見える。

「これが…?」

「数値自体に問題はないよ。ただ…」

「ただ…?」

いやな予感がする。いつも快活に笑っている先生の顔が暗い。

「最近、変だと思ったことはなかったかい?」

「変…?」

「例えば、歩きにくそうにしていたり、手足に痺れが出ていたり…言葉がうまく言えていなかったり」

「言われてみれば…」

ここ数日の姫奈の行動を思い返してみる。

直近で言えばまさに今日、歩いている途中で足が痺れたと言って少し休憩をしたし、舌が絡まったように呂律が回っていない時があった。

「やっぱり…私の方でも看護師から食事がうまく飲み込めなかったことや、階段の上り下りに以前よりも時間を要していることが報告されている」

でも、それとこれに何の関係があるのだろうか。姫奈自身、最近歩いていないから痺れたと言っていたし、一瞬呂律が回らなくなることだって、普通の人にでもあることだろう。

そのくらいの、些細な変化だった。

「宗一郎くん、患者の些細な変化にはね、気をつけないといけない。現にこれは、姫奈ちゃんの病気の進行例と完全に一致してしまっている」

頭が真っ白になった。

それでも、先生は続ける。

「これだけの症状が一気に出てきてしまっている。私も初めてのことで、上部とも今話し合いながら今後の治療方法について見直しているんだ」

姫奈は、どうなるのだろうか。

「先生、このこと、姫には…」

「言わないよ。彼女の場合は特に精神の状態が進行に関わってくる。ご両親には説明するけど、もう少し様子を見てからだ」

それからは、先生と今後の姫奈の様子見や気をつけることなどについて聞いた。