桜が咲く時まで、生きていたい

____宗一郎side____

「別れよう。別れてほしい」

大好きな姫奈と海に来ている時に急にそう言われて、頭が回らなかった。

「…なんて?」

そう返すのがやっとだった俺に、姫奈はまるで用意されていたような理由を述べた。

意味がわからない。

だって、順調だったはずだ。

それに…。

姫奈自身が気づいているのかわからないが、とても辛そうな、泣きそうな顔をしている。

何か理由があるに違いない。

立ち去ろうとする姫奈を捕まえたけど、それも振り切られてしまった。

周りで大学生ぐらいの女が数人騒いでいるが、今の宗一郎の耳には届かない。

やがて飽きたのか、その人たちも去っていった。

夏の海辺、人が多く行き交う中で、宗一郎だけが動いていなかった。

どのくらい経ったのかもわからない。

不意に、何故か白衣を着た女性と力がありそうな男性が慌てた様子でトイレに入っていった。

おそらく、熱中症にでもなった人がいるのだろう。

大好きな姫奈に唐突に別れを告げられた宗一郎は、自分がどうやって帰ったのかもわからなかった。

気づけば十八時を過ぎていた。

やっぱりちゃんと話したいと思い、家に向かうが、何故か姫奈と同じ、悲しさに押しつぶされてしまいそうな顔をした姫奈のお母さん

が出てきた。

姫奈に合わせてほしいと頼むも、部屋から出てこないの一点張りで、その日は諦めた。

次の日も、その次の日も、もう何日めかになるかわからないほど毎日姫奈の家に行く。

絶対に家にいるであろう夜に行くも、絶対に姫奈が出てきてくれることはなかった。

姫奈の部屋の電気もついていない。

この家にいないのでは?と考えた宗一郎は、姫奈と仲がいい千佳や瑠花にも会いにいったが、二人は何も知らないようだった。

若干いつもと違うような気がしたが、気のせいだろう。

ある日、春樹と蘇芳と会うタイミングがあった。

「宗一郎、姫奈ちゃんとは?」

「それが…」

宗一郎は春樹と蘇芳に今までのことを話した。

「なるほど…。でも、姫奈ちゃんって、そんな一方的に縁を切る子だったっけ?」

改めて考えると、姫奈は絶対にそのようなことはしない子だった。

何かがおかしいと思い始める。

すると、今まで沈黙を貫いてきた蘇芳が口を開いた。

「僕…この間姫奈ちゃんが運ばれていくのみた。何日か経って千佳と瑠花が病院に入っていくとこも見たよ」

「お前…なんで知ってるんだ?」

「僕の妹…体調崩しがちで、よく病院に行くから、僕もついていくんだ」

思いがけない収穫だった。

それにしても、運ばれていったってどういうことだ?

貧血もちだとは聞いているが…。それに、もし病院にいることが本当だったら、入院が長過ぎないか?

その日以降、病院を探し回った。病院で変な噂が出回っていうことは知らずに。