桜が咲く時まで、生きていたい

終業式も始まり、校長先生の長い長い話も終わった。

「やっと終わったー!」

「姫、立ちっぱなしの時間多かったけど、体調大丈夫?」

瑠花がそっと聞いてくる。

だが、そんな言葉を聞き逃さなかった人がいた。

「え、大丈夫か?」

「っ!宗一郎くん!?だ、大丈夫!」

瑠花がしまった、という顔をしている。

「姫は今日の放課後…」

「び、い、家の用事で…」

「早く帰った方がいいんじゃない?」

瑠花が話を合わせてくれた。

「そ、そうだね!じゃあ、先に帰るね…!」

そそくさと学校を出て病院に向かう。

病院につき、検査をいろいろすることになったので、準備をし、時間を待った。

その間、宗一郎とメッセージでやり取りをしていた。

この夏、何をしよう、など。

たくさん、話した。

「姫奈ちゃん、行こうか」

「はい…」

「そんな暗い顔しないで、って言っても無理か…」

検査結果は…。悪かった…。

「これからの入院生活だけど…。姫奈ちゃんの病気は症例が少ないの…。だから、決定的な治療方法もない。手探りの治療になっていくと思うの。辛いと思うけど、一緒に頑張りましょう」

その日から始まった入院生活は、思ったよりきつくはなかった。

どうやら、姫奈の担当らしい看護師さんとも仲良くなった。

「えー!!姫奈ちゃん彼氏いるの!?」

「ちょ、声が大きいです!」

「いいねぇ」

もう、と言いながら言い返そうとすると、急に視界が歪み始めた。

すぐに変化に気づいた看護師さんが対処を始める。

「今日、家に彼氏さんがくるんだっけ?この様子じゃ、無理そうだね」

「お、お願いします…!先生にはまだ黙ってて…」

「仕方ないね…」

普通に考えて、今の状態を先生に報告しない看護師はいないものだが、今の姫奈の頭にそれは思い浮かばなかった。

ちょっと待ってて、と言って部屋を出ていった看護師を、呼吸を整えながら待つ。

「親御さん、もうすぐ迎えにくるって」

「え…」

てっきり、ダメだと言われると思っていた。

「彼氏くん、来るんでしょ?」

そう言ってパチっとウインクをした。

看護師さんには感謝しかない。

その後お父さんの運転する車に乗って帰った。

自分の部屋に戻って待つ。

しばらくして、下からお母さんの声が聞こえてきた。

「姫ー!!宗一郎くん、きたわよぉー!」

「はーい!!」

下に降りていくと、宗一郎が玄関に佇んでいた。

相変わらず今日もイケメンである。

今日はこの後一緒に海を見にいくことになっていた。

「おはよう、姫」

笑顔が爽やかだ。

外は灼熱なのに宗一郎の周りは空気が爽やかな気がする。

「お、おはよう」

病気の影響か、若干痩せてしまったのと、顔色が悪いので、少し化粧を厚めにしている。

「今日も可愛い。今日はメイクしてるんだ?海行ったら姫の真っ白なお肌が黒くなるかもな?」

そう言って笑う。今の姫奈からすれば、もっと肌に色味が欲しいところだ。

「じゃあ、いこっか?」

「うん」

家を出る直前、電話が鳴った。

「あ、ちょっとごめんね」

表示された名前が先生だったため、宗一郎には電話の内容が聞こえないところで電話に出る。

「はい、姫奈です」

『羽田さんから聞いたよ。体調が悪くなったり、何か少しでも異変があったらすぐに連絡すること。今日はどこにいく予定?』

羽田さんというのは、今日の外出を許可してくれた看護師さんだ。ちなみに、先生の名前は小牧奈々という。

「海を見にいくことになってます」

『海か…日差しが強いな。日傘はちゃんとさしなさいよ。女子としても』

「はーい」

その後も少しお小言をくらい、電話は終わった。

病院に戻ったらしばらく外には出して貰えないらしい。

小走りで玄関に戻る。

「ごめんね!お待たせ!」

それから心配そうな両親に見送られて出発した。