それからも律は、京の体力を取り戻させようと昼夜を問わず世話をした。
湯を沸かし、冷めぬうちに飲ませ、布団を整え、額に手を当てて熱を確かめる。その手は震え、目の下には隈が浮かび、頬はげっそりと痩せていた。
京の回復を願うあまり、自らを削ることなど気にも留めていないように見えた。
京はそんな律の姿を、熱にかすむ視界でじっと見つめていた。
あれほど恐れていた相手なのに――それでも、胸の奥底からせり上がる思いを抑えることができなかった。
「……律さん。もう、大丈夫だよ。俺は……大丈夫だから。少し休んで」
弱い声で、けれど確かに律を気遣う言葉を口にする。
それは遠回しに、自分を犠牲にしてまで看病するのをやめてほしいという願いでもあった。
律は一瞬、息を詰めた。
心臓を掴まれたように胸が痛んだ。
(……どうして、この子は……こんなになってまで、私を気にかけてくれる……?)
あの夜、冷水を浴びせ、鍵をかけ、孤独に晒したのは他ならぬ自分だ。
そのせいで京はここまで弱り果て、命すら危うくした。
罪は誰の目にも明らかであるのに――京はまだ、自分を案じる言葉を向けてくる。
「……京……」
律の喉は震え、声はかすれた。
温もりではなく罪悪感で胸を満たされる。
こんなにも救われてしまう自分が、どれほど残酷で愚かなのか。
京の優しさが、京の人としての目線が――絶望のように重くのしかかる。
(私には、この子しかいない。だが……私には、この子を持つ資格がない)
その夜、律は静かに心に決めた。
京を、もうこの屋敷から解き放たねばならないと。
それがどれほど苦しくとも、唯一残された償いであると――。
湯を沸かし、冷めぬうちに飲ませ、布団を整え、額に手を当てて熱を確かめる。その手は震え、目の下には隈が浮かび、頬はげっそりと痩せていた。
京の回復を願うあまり、自らを削ることなど気にも留めていないように見えた。
京はそんな律の姿を、熱にかすむ視界でじっと見つめていた。
あれほど恐れていた相手なのに――それでも、胸の奥底からせり上がる思いを抑えることができなかった。
「……律さん。もう、大丈夫だよ。俺は……大丈夫だから。少し休んで」
弱い声で、けれど確かに律を気遣う言葉を口にする。
それは遠回しに、自分を犠牲にしてまで看病するのをやめてほしいという願いでもあった。
律は一瞬、息を詰めた。
心臓を掴まれたように胸が痛んだ。
(……どうして、この子は……こんなになってまで、私を気にかけてくれる……?)
あの夜、冷水を浴びせ、鍵をかけ、孤独に晒したのは他ならぬ自分だ。
そのせいで京はここまで弱り果て、命すら危うくした。
罪は誰の目にも明らかであるのに――京はまだ、自分を案じる言葉を向けてくる。
「……京……」
律の喉は震え、声はかすれた。
温もりではなく罪悪感で胸を満たされる。
こんなにも救われてしまう自分が、どれほど残酷で愚かなのか。
京の優しさが、京の人としての目線が――絶望のように重くのしかかる。
(私には、この子しかいない。だが……私には、この子を持つ資格がない)
その夜、律は静かに心に決めた。
京を、もうこの屋敷から解き放たねばならないと。
それがどれほど苦しくとも、唯一残された償いであると――。

