「なんだ。お前、あの記事ちゃんと読んでないのな」

　やっと、瑞稀くんが口を開いた。

「え？」
「来月号、俺たちStarixが表紙ジャックして、巻頭特集だぞ」

　凛斗さんが目を見開いて、ほんの一瞬、瑞稀くんをキッと睨んだ。

「へー、それはよかったな」
「ああ。俺たちを表紙に選んでくれたエモガールの編集さんたちに感謝だな」
「そうだな。まあ、今後も同じような仕事が来ればいいな。あるかどうかわからないけど」

　凛斗さんは面白くなさそうにそっぽを向くと、仲間二人を引き連れてどこかへ去ってしまった。
　私は遠ざかっていく凛斗さんの背中をじっと見つめる。
　あんなふうに、瑞稀くんを真っ向からライバル視……どころか、敵視している人に初めて会ったからかもしれない。
　後ろ姿だけでもわかるくらいイライラしている凛斗さんから、なぜか目が離せない。そして、同時にものすごく胸騒ぎがする。
　もしかして、瑞稀くんを狙っているのって……凛斗さん？
　いや、まさかね……。そんなの私の気のせいだ、よね……？