「あっ、お姉さん……」

 男の子は私に近づくと、気まずそうに目を泳がせる。

「大丈夫? ケガはない?」

 少しかがんで声をかけると、男の子はぎこちなく首を縦に振った。

「そっか、よかった。でも、もう赤信号で飛び出しちゃダメだよ」
「うん、ごめんなさい」

 素直に謝る男の子に、私が笑顔で「うんっ」とうなずいたそのとき。
 スカートのポケットの中で、スマホが着信音を鳴らしながらふるえた。
 電話かな? いったい誰だろ……って、ママ⁉