『飛べ!』

 心の中で強く念じた。次の瞬間、男の子の体がふわっと宙に浮いた。

「うわっ‼」

 信じられない、とでもいうように、男の子が目をまんまるに見開く。
 交差点前にいる人たちも、口をポカンと開けたり、目をこすったり……未確認飛行物体でも目撃したかのようにどよめいた。
 思った通り、騒ぎになっちゃった……って、そりゃそうだよね。
 だって、横断歩道に立ち止まっていた男の子が、突然大型トラックの屋根よりも高く舞い上がるなんて……。
 現実的に考えたら、あり得ないことだもん。
 でも、トラックもとっくに横断歩道を横切っていったことだし、早く男の子を降ろさなきゃ。
 私はもう一度、男の子に向かって、『ゆっくり降りて』と念じる。
 すると、ふわふわと宙に浮いていた男の子が、少しずつ地上に向かって降りていき、最終的に歩道にトンッと足をつけて着地した。