パタンとドアが閉まったあと。私は解放されたように、はあっとため息をついた。同時に、全身からどっと汗がふき出る。
 どうやら瑞稀くんは、私のことをすっかり忘れているみたいだ。
 そりゃそうだよね。だって、3年も会っていなかったんだもん。
 お互い、最後に会ったあのころより、ずっとずっと成長してる。
 だから、瑞稀くんが私を見ても、幼なじみだって気づかないのも当然のことだ。
 なのに、なんだろう……?
 私のことなんて、忘れられていたほうが都合がいいってわかってる。
 それなのに、心のどこかで『私のことを忘れないで欲しかった』と泣いている自分がいる。
 揺れ動く二つの気持ちに、私はしばらく呆然と立ち尽くしていた。