「う……、嬉しぃぃい……」
「陽名、どうした?」 

 感動のあまり涙ぐんでいると、瑞稀くんが心配そうに私の顔をのぞき込んできた。

「だって……私たちが作り上げたCMが、たくさんの人たちに喜んでもらえてるんだよ⁉ これって、すごいことじゃない⁉」

 両手の拳を握り締めて力説する私に、瑞稀くんは一瞬ハッと目を丸くした。
 でも、すぐにふっと目を細めて、「そうだな」と柔らかな笑みを浮かべる。
 あのCMを撮影した日は本当に大変だった。
 大きなトラブルがあったけど、みんなで力を合わせて頑張った。
 その結果、目の前のファンの子たちに喜んでもらえてる。足を止めてまでCMを見てくれている人たちがいる。
 瑞稀くんだけじゃない。このCMをきっかけに、starixのみんなのことをもっと好きになってもらえてる。
 あのとき、頑張ってよかったなあ……。そうしみじみ思っていたそのとき。

「そういえばさ、このCMに出てくる女の子、誰なんだろう?」

 ファンの子たちの話題に、突然私の話が飛び出してびっくり!

「ネットでも話題になってるよね! でも、名前を知ってる人はいないみたい」
「新人の女優さんかな? それともエキストラ?」
「いったい誰なんだろうね……?」

「その女の子とやらは、ここにいるんだけどな」
「み、瑞稀くんっ! しーっ!」

 クスクス笑う瑞稀くんに、私は慌てて口の前で人差し指を立てた。