「その色の浴衣……、陽名が選んだのか?」
「う、うん」

 顔がかーっと熱くなるのを感じながら、私はこくんとうなずいた。
 もしかして、私が瑞稀くんのメンバーカラーの浴衣を選んだって気づいて、そんなことを聞いてきたのかな?
 緊張でうつむいたまま次の言葉を待っていると、フッという笑い声が私の上にこぼれ落ちる。

「それ、陽名にとても似合ってるよ」
「えっ? 今、なんて……」

 思わず顔を上げると、瑞稀くんはしれっとした口調でこう言った。

「撮影始まるから頑張ろう、って言ったんだよ。じゃ」

 淡々とそれだけ言って軽く手を挙げた瑞稀くんは、緑色のスクリーンの方へ下駄を鳴らしながら歩いて行った。