あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

【玲夜 side】







乃亜、まだ起きてんのかな。



お風呂から上がって、ドアを開けようとしたときだった。








「――――たすけて」









は?





今、のは……?



今の言葉は、本当に乃亜が言ったのか……?






いつもの明るい乃亜からは想像がつかなくて、ドアに置いていた自分の手が硬直する。





でも、リビングにいるのは乃亜しかありえない。



絶対に、だ。








「もう、やだよ……っ」








普段、絶対に言わないような言葉。




今、乃亜のところに行ったら続きが聞けないだろう。






俺は、ダメだとわかっていながらも、気配を消して、聞いた。







「あたし、ちゃんと頑張ってるよね……? たまには、休んでもいいよね……?」





頑張っている? 一体、何を……?







「今日だけは……誰も、見てない今だけは……泣いてもいいよね……っ」







涙声になって、少しだけ嗚咽をもらしながら放った言葉。



その言葉を聞いて、今すぐにでも飛び出していきたい心をぐっと抑えた。



すぐにでも、抱きしめてやりたい。




涙をぬぐってやりたい。







泣いてもいいよね?





乃亜は、一体何を抱えているんだ……?










「―――――いっそのこと。もう、目を覚まさなかったら楽なのにな」











そんな言葉が聞こえてきて、俺は息をのんだ。



きっと、乃亜は闇を抱えている。




俺が抱えきれるような大きさじゃないことだって、すぐにわかった。









乃亜は、もしかして、ずっと耐えてきたのか……?



誰にも、涙を見せず、本音を言わず。








――――どれだけ、苦しんだんだろう。










そこで、もう乃亜の声が聞こえなくなったのを感じた。




俺はドアを開けて、乃亜の姿を確認する。