凪がくれた勇気

歩侑(ふう)
(もしかして…清凪(せな)く…?!)

先輩
『手塚さん、大丈夫?』

歩侑(ふう)
「あ…。」

本を拾ってくれたのは図書委員の先輩だった。

彼女は私の筆談にイヤな顔をせず付き合ってくれる、
学校で唯一の理解者。

私が姉のように慕っている人だ。

歩侑(ふう)
「あ…あ…!」

私の頭に清凪(せな)くんの残像がちらつき、
とっさに”ありがとう”の手話を見せた。

先輩
『どうしたの?』

先輩には手話が伝わらなかった。
そうだ…清凪(せな)くんはもういない…。

私がポケットからペンとメモ帳を取り出すと、
それを見た先輩も筆談の準備を始めた。