<後日、デフリンピック開会式当日>

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『選手入場ーーー!!』

歩侑(ふう)
「き、来た!選手団!バスケット選手はそろそろかな?」
「あ!あの人も、あの人も、見覚えある!」
「夏休みに観た試合に出てた!」

夏休みが終わり、
街に秋の気配が漂い始めた。

この日、私はデフリンピック開会式の
生配信動画を観ていた。

歩侑(ふう)
清凪(せな)くんは…いた!」
「気のせいかな?夏休みの時より逞しくなった…?」

あの後の強化試合でも清凪(せな)くんは活躍し続け、
見事にデフバスケ代表選手に選ばれた。

私は清凪(せな)くんの試合の動画や記事を追いかけ、
ひそかに応援していた。

歩侑(ふう)
「なんだか不思議…。」
「私があんなに遠い世界の人と話してたなんて。」

笑顔で手を振りながら
競技場を堂々と行進する清凪(せな)くんを見ると、
私はまるでおとぎ話の中にいるような
ふわふわした気持ちになった。