<試合終了後、市立体育館入口>

清凪(せな)
(今日は応援に来てくれてありがとう。)

歩侑(ふう)
(こちらこそ!清凪(せな)くん、逆転勝利おめでとう!)

清凪(せな)
(ありがとう。絶対に本大会メンバーに残ってみせるから。)

歩侑(ふう)
(うん!清凪(せな)くんなら大丈夫!)
(デフリンピックで見られるのを楽しみにしてる!)

清凪(せな)
(これ、デフリンピックのチャンネルURL。)
(試合が動画配信されるから、ぜひ観てね。)

歩侑(ふう)
(ありがと、観るよ!)

音のない、メモ帳とスマホだけの会話。

人前でしゃべれない私にとっては
いつも通りの会話スタイル。

なのに、私は生まれて初めて
誰かと心が通じ合った気がした。

歩侑(ふう)
(伝えたいな…清凪(せな)くんに…。)
(けど、何て言えばいいのかな…この気持ち…。)

試合中に感じた、
胸がきゅっと締めつけられる感覚。

清凪(せな)くんのことを考えると
頬が熱くなる感覚。

この、名前のわからない気持ちを、彼に…。