歩侑(ふう)
「あ…清凪(せな)くんが空いてる!パス来ないかな…?」
「き、来た!!清凪(せな)くんにボールが…!」

ゴールから遠い半円形のラインの外側から
清凪(せな)くんがシュートを放った。

歩侑(ふう)
「うわぁ…あんなに遠くからシュート…。」
「お願い…入って!」

高く、美しい弧を描いたボールは、
吸い込まれるようにリングを通り抜けた。

デフバスケチームの得点が
78点から81点に増えた。

歩侑(ふう)
「すごいすごい!3点シュート!逆転したよ!!」

残り2分30秒。

私は今まで感じたことのない高揚感に
居ても立っても居られなかった。

清凪(せな)くんが用意してくれた最前列席から
声の限りに叫んだ。

歩侑(ふう)
清凪(せな)くーーーん!がんばれーーーー!!」

清凪(せな)くんに届くように
”応援”の手話を夢中になって繰り返した。

そこにはもう、
人に怯えて口ごもる私はいなかった。