ナイショの妖精さん1

 坂はどんどん急になる。

 きのう山登りしたふくらはぎは、パンッパンでもう破裂寸前!

 だけど、前を歩くムカつくほど長い足は、ぜんぜんスピードをゆるめない。


 ペンション風の三角屋根の家が建つ高台を、よたよたとのぼっていくと、ひときわ白い横板壁の家が見えてきた。
 高台の斜面に、海にせり出して建てられていて、崖に足場を組んで、下から家を支えている。

「ここ、オレんち」

 ウソぉ……。

 あたしはアホ毛をゆらして、立ちつくした。

 屋根を見あげれば、風見鶏。門には、ピンクのバラのアーチ。

 庭はモスグリーンの形のちがう葉っぱでいっぱい。稲っぽい葉っぱだったり。丸っこい葉っぱだったり。そのあちこちに、うす紫や白や水色の小花が咲いている。

 め、メルヘン……絵本の世界に迷い込んじゃったみたい。

 なのに、葉っぱの間の小路を歩くのは、中条。

 うう……メルヘン台無しっ!

 小路の先に、石レンガづくりのポーチが近づいてきた。

「つむじ風」っていう看板と、白いペンキで塗られたメニューの立て看板。白木のドアには、「本日定休日」っていうプレートがさがってる。

「あれ? 中条んちって、お店屋さん?」

「かあさんが最近、自宅カフェをはじめたんだ。ここらへんに植わってんのはみんな、店でつかうハーブな」

 なにそれ、ズルイ。

 自家栽培のハーブをつかったケーキやティーなんて、おいしいに決まってんじゃんっ!

「これで、中条の家でさえなければ……」

「どういう意味だよ」