ナイショの妖精さん1


 怖い……。

 なにが怖いって、度胸だめしすることが、じゃなくて。

 片眉がひくついている中条の顔が。

 これでもし、妖精がいなかったら、あたしこれから、本腰入れていじめられるんじゃ……。

 せっかく、妖精が入っていった場所を確かめるチャンスなのに。中条のオーラが怖すぎで、ぜんっぜん楽しめない。


 ひとつ、ふたつ、三つ……。

 先頭に立って、アーチ状の入り口から、中をのぞき込んでいく。

 ならんだ穴の中はどこも、しんと暗い。
 車庫みたいに長方形した部屋は、がらんどう。古いレンガの壁のすき間から、冷たい闇が染み出してる。

 中条はあたしの数歩後ろを、めんどくさそうについてくる。
 あたしが三歩歩くところを、長いコンパスの足で一歩。わざとのろのろ足を出してるところが、嫌味な感じ。

 お互い無言で、アーチ状の入り口の前を通りすぎて。


 四つ目の部屋。

 のぞきこんだら、真ん中で、小さな銀色の粒がまたたいた。

 なんだろ……?

 暗がりに目が慣れてなくて、そこだけチカチカして見えるのかな?

 周囲が見えてきて、チカチカの光が輪郭をつくっているのに気がついた。

 トンボの羽。

 細かい光がラメみたいに無数にちりばめられていて、部屋の中央で、小さな銀色の羽を形づくってる。

 羽だけじゃなくて、羽のはえた小さな人にも、光の粒はふりかけられていた。

 ……さっきの子っ!

 バレリーナみたいな白い服の女の子。赤紫色の花を手に、がらんどうの部屋にたたずんでる。

 その子の前に、もうひとりの妖精が横たわっていた。

 顔立ちは中学生くらいかな? 白いレースのロングドレス。ふわふわパーマの長い髪に、小花のかんむりをつけて。目を閉じて、両手を胸の上で組んでいる。

 だけど、その子の肌を見て、目をつむっちゃいたくなった。

 だって、かわいそう……。

 カワイイ顔や真っ白の細い手足のあちこちに、カビみたいな緑の斑点ができている。目もずっと開けないし。

 なんかの病気……?