船瀬さんの彼女、村井さん。



頭の中が上手く整理できなくて、エレベーターに乗り込み、一階のボタンと閉じるを押して、深いため息をついた。とりあえず、約束していた船瀬さんとのお疲れ会に行こう。それに、明日になれば体が元に戻っているかも。



先の分からない不安なんて、果てしない闇なだけ。どんどん深みにハマるくらいなら、なるようになると吹っ切ったほうが早い。



吐いたため息を体に戻すように、勢い良く鼻から息を吸い、顔を上げた。同時にエレベーターの扉が開き、開けるボタンを押してみんなが出るのを待つ。


全員が出たのを確認して私もエントランスに出ると、すでに仕事を終えて待っていてくれた船瀬さんが立っていた。



気をつけないと。気を抜いてヘマをしないように…。まずは、船瀬〝くん〟と呼ばなきゃ。




「船瀬くん。ごめんね、遅くなって」


「ううん。俺も一個前ので降りて来たとこだし。飯、どこ行く?」




エントランスから外に出て、隣を歩いている船瀬さんを見る。二人並んで歩いている景色が、まだ信じられない。


私が船瀬さんと並んで歩くのは、会社だけ。



目尻を下げて口元が緩んだ船瀬さん、こんな優しい表情は初めて見た。村井さんには、そういう表情するんだな。