船瀬さんの彼女、村井さん。




せっかくリーダーとしてプロジェクトを進めることになったのに、乗っ取られるのは悔しい。でも、村井さんのままだと、船瀬さんの彼女で居られる。


プロジェクトか、船瀬さんの彼女か。今選ぶなら、断然プロジェクト。


会社に入ってから知り合って、同期として仲良く3人で仕事してきて、先輩にも後輩にも気配りできる、優しい船瀬さんを好きになって。


仕事に一生懸命な船瀬さんに、プライベートな感情を伝えられず、気づけば村井さんが船瀬さんの隣に居た。


好きって言えなかったことを後悔しているけど、そのおかげでプレゼンに力が入って、リーダーになれた。


何も今更、船瀬さんの彼女になりたいって思いが、叶わなくても。



とりあえず今は、村井さんであることを受け入れるしかない。どう足掻こうと、押谷に戻る方法も分からない。


村井さんのマグカップにコーヒーを淹れて、給湯室を出ようとすると、携帯が鳴った。


ポケットで鳴っていたので取り出して見ると、通知には船瀬さんからのメッセージだった。



〝今どこにいる?〟


メッセージの上部には、〝船瀬くん〟の文字。


そうだ。村井さんは船瀬くんと呼んでいたんだ。私は入社時から変わらず船瀬さんなので、起こされた時にさん呼びしてしまったことを思い出して、少し背筋が伸びた。



〝給湯室だよ〟