「お邪魔しても良いの?」
「何だよ今さら。急によそ行きの顔になるなよ」
「いや。緊張するじゃん」
それっぽい返事をして、思いの外すんなりと船瀬さんの家にあがることができた。
船瀬さんと村井さん、どういう関係までいってるんだろう。もう一通り済ませてるのかな。もしそうじゃないなら、どんどん先へ進んでいく気配がしたら、どうにかして止めないと。
村井さんの体を借りているだけで、感情や感覚は押谷だ。もし村井さんが元の体に戻った時、初めての記憶がないなんてこと、申し訳なさすぎる。
「私、何を変なこと考えてるんだろ…。気持ち悪い」
「…どした?」
「ううん、何でもない」
もらったキンキンに冷えたビールを一口、ゴクっと喉に通すと、いつもあまり飲まないからか美味しいとは思わなかった。
でも村井さんはビールが大好き。それは知っていたから、飲んだ。体は押谷だから、美味しくはないけど。
「押谷さん、これから忙しくなるって言われてたけどさ。俺らもフォローとか入ると忙しくなるし、こうやって会うのもできないかもな」
「そうだね。プロジェクト成功させたいしね。何かできることがあれば、手伝いたいけど」
「押谷さん、俺ら要らないんじゃないってくらい動く人だからね。時々見下されてる感あって嫌だけど」



