レオンハルトはその日、列車に乗って調査に向かっていた。夕方に事務所のある街に到着し、駅を出た時に彼は呟く。

「雨……」

土砂降りの雨が降っていた。レオンハルトは杖を取り出し、「ルパラプリュイ！」と呪文を唱える。すると杖に光が集まり、一本の傘となった。

魔法で作った傘を差しながらレオンハルトは歩く。定時は過ぎているため、もう事務所には誰もいないと思っていた。しかし、その予想は外れた。

リズが残っていた。リズは窓の外を見つめている。雨粒が街路樹に当たり、落ちていく。リズの口が開き、何かを呟いていた。レオンハルトは耳を澄ませる。

「レ。ファ。ドの♯」

街路樹の葉っぱに当たった雨粒の音をリズは口にしていた。レオンハルトはリズに話しかける。

「リズ、君は絶対音感の持ち主なんだね」

「レオンハルトさん！おかえりなさい」

リズは少し恥ずかしそうに微笑んだ。レオンハルトはリズの隣に並び、雨音を聴く。レオンハルトの耳には雨粒が当たる音しか聞こえない。