響け!色彩のフォルテッシモ

アントーニョの言葉にレオンハルトは立ち上がり、走って事務所を飛び出す。事務所からポストまでは歩いて十五分もかからない。

(何かあったのでは……)

レオンハルトの胸に不安が渦を巻く。すると、視界に見慣れたエプロンドレスが目に入った。リズである。リズは誰かと話しているようだった。

「ファンベンダー卿?」

ジョセフ・ファスベンダーはリズの手を掴んでいる。リズは困った様子だった。

「君はメレ国出身なんだってね。私もメレ国で働いていたことがあるんだ。君のご両親はーーー」

「離してください!」

リズが大きな声を出す。レオンハルトは足を動かし、ジョセフの手を掴んだ。

「ファスベンダー卿。私の事務員に何かご用ですか?」

低い声でレオンハルトは訊ねる。ジョセフは驚きを隠さず、たじろいだ。

「レオンハルト殿……。いや、彼女が事務所から出てくるのを見ましてね。この方がやはり例の新しく雇った女性ですか。では、私はこれで」

ジョセフは逃げるように近くに停めてあった馬車に乗り込み、去っていく。レオンハルトはすぐにリズの方を向いた。

「リズ、大丈夫かい?」

「レ、レオンハルトさん……」

リズの手は震えていた。レオンハルトは彼女を優しく抱き締める。鼓動が、また早くなった。