響け!色彩のフォルテッシモ

(この美術室には何者かによって鍵が掛けられていた。つまり、ここは密室だったというわけだ。犯人は窓から侵入し、窓から逃げていったと考えるのが普通だろう)

窓の下には、手入れの行き届いていない雑草が生えた地面が見えた。その土はぬかるんでいる。

「確か、昨夜は雨が降っていました。ここは陽当たりもよくないので、地面が乾くのに時間がかかると思われます」

リズはそう言い、窓枠を見つめた。窓枠は綺麗だ。泥汚れ一つない。

「魔法を使った痕跡はありますか?」

リズの問いにレオンハルトは首を横に振った。

「魔法を使ったのは私だけだ。他の誰かの痕跡は残っていない」

事件が起きてしまった。レオンハルトは、騒ぐ美術部部員たちをジッと見つめる。被害者であるフンベアトは、部員たちを落ち着かせるためかやけに冷静だった。