琳華の中でごく僅かではあるが今日一日の梢の様子と一向に姿を現さない父親といきなり部屋の前の廊下に来て「玉の輿」と言った母親と。
行動や話の全てが繋がってゆく。王宮殿からの使者は偉明であり、しかもその目的は今回の件の報告も多分、少しは兼ねているのだろうが本題は別にあった。
「だが、何だろうな。ご息女が帰った後、どうにも手持無沙汰で……宗駿様のみならず、雁風にも指摘されて気がついたのだ」
それもどうかと思う、と言いたい気もあるが今はそれどころでは無い。
琳華もまた、似たような思いを抱いていたのだ。何も為せなかった後悔と疲労だけが残り、結果としては成功ではあったのだが実際に大きな功を挙げたのは伯家の方。結果は仕方ないが周家の娘として、仮とは言え秀女としての振る舞いを思い返しては――その中にはいつも、偉明の姿があった。
「私も今より屋敷へ帰る日を作ろう。その時に少し付き合って貰いたい。先生御夫妻が構わぬならば私がお邪魔をしても」
「そ、そんな……」
「いや、まあそうだな……まだ私の早計か……」
何か思案をしている偉明だがその腕は琳華を抱いたままだ。
離して、となんとか彼の胸元を押した繊細な手に「ああ、すまない」となんとも軽い謝罪が返ってくる。
とりあえず互いに座るにしてもなんだか、と琳華は庭を回ろうと進言をする。二人だけの会話なら高い塀を隔てているので誰かに聞かれる事もない。
「小梢、いるんでしょう?」
客間の扉に呼びかければ「でへへ」とにやけた顔をした侍女が一人、細く開いた扉から顔を出した。
この屋敷の中で偉明の来訪を知らなかったのは琳華だけ……本当に、してやられた。
