『その秀女、道を極まれり ~冷徹な親衛隊長様なんてこうして、こうよっ!!~』



 まるで牢獄のように無機質な部屋。
 王宮殿では上級貴族の子女に対していくら嫌疑があろうとも罪が確定するまでは尋問や拷問紛いの事を行うのは禁じられていた。
 しかし事実上、琳華の目の前には階級の高い男性兵士と官職を賜っている宮正が同席し、その女官が直接、琳華に質問を投げかける。
 座らされた無垢の椅子は中の下、卓も所々に傷があった。

 「では琳華様のお部屋から見つかった絹袋の香嚢は劉家のご息女から貰いうけた、と」
 「はい、間違いありません」
 「それを誰が証明できますか?」
 「普段のわたくしの行いです。秀女筆頭として恥じぬよう努めて参りました」
 「お二人は随分と仲が良かった、と報告が上がっていますがそれについて何か申し開きはありますか」

 女官の抑揚のない淡々とした声と質問は流石の琳華でも少し怖くなる。

 「わたくしは……宗駿皇子様からご寵愛を賜ることを目的として秀女となりました。それ以外に考えはありませんが……最年長者として年下の者の面倒を見るのは」

 だからこそ秀女筆頭となっている、と暗に言う琳華は一度も視線を下げたりなどしなかった。

 「ではその香嚢の中身については一切、琳華様は知りえないと言うことですね」
 「はい」

 宮正と兵士が顔を見合わせ、頷き合う。
 宗駿皇子の為ではあるが別に寵愛を賜ろうとは思っていない。むしろ今は何故、このような状況に陥ったのかが知りたい。

 (宮正による抜き打ちのガサがあったとしても、その上層である父上のいる兵部にて認証会議がされるはず。ましてや客人の待遇であるわたくしたちに対して嫌疑をかけ、私物を漁るにはそれ相応にウラが取れていなければ……わたくしはまだ、何もコトを為していないと言うのにどうしてこんなことに)

 それに梢も無事なのだろうか。客人たる自分について来ている身ではあるが後宮の階級に置き換えれば下女のような立場。いくら自分が大切にしていても階級社会の中での彼女はどうしても身分が低い。

 (何よりも愛霖様……わたくしには彼女にそんな太い肝があるようには見えなかった。いいえ、わたくしは彼女の本当の姿を見ていなかった?)

 初めて会った時、顔色が悪かったのは確かだ。
 緊張をしていたのだろう、と声をかけたのをきっかけに仲良くなった。お茶にも誘われ、楽しく和やかな時間を過ごしたりもした。
 けれど気の強い丹辰は愛霖のことを嫌って……と言うか正確が根本的に合わなかったのだろうが琳華は家庭教師をしていたサガのせいか、丹辰や取り巻きが彼女のことをどう見ていようが年下の愛霖を見捨てておくことができなかった。

 「周琳華様、ご不自由を強いることになりますが仔細が出るまでこちらに滞在をしていただくことになります」
 「承知いたしました」

 元から布団部屋にいたのだ。別になんてことはない。
 言質を取ったと同時に退室をしようとする女官と兵士は番をしている宮正の宮女に願い出れば不自由な思いはしない、と言う。

 「あの、わたくしの侍女についてなのですが」
 「琳華様とは別室での待機となります。ご心配なさらず」

 きっぱりと言われては琳華も黙るしかない。
 下手なことを言えば……偉明にするように口ごたえじみた事をすれば状況は良くない方に傾いてしまうかもしれない。まさに沈黙は金、である。