とんでもない真実を知った所で気まずい雰囲気こそ流れはしなかったがいつしか本当に寄宿楼の二階の講義の為の広間には琳華と丹辰だけが残った。楊も今しがた、女官に連れられて出て行った。
仕方がないので琳華も丹辰の話し相手になっていたのだがここで一つ、彼女は重要な情報を言葉にする。
「あの、琳華様はお気づきになっているでしょうか……その、劉愛霖様のことなのですが」
もう二人だけになった広間。一応、廊下側に下女が控えているので丹辰の声も小さくなる。
よく聞こうと椅子を移動させ、膝を突き合わせようとした琳華に丹辰は恥ずかしそうに「きゃっ」と鳴いた。
「え、えっと……ゴホン。琳華様は愛霖様と仲が良く……」
「ええ、はい。当初は事のなりゆきでしたが最年長として、筆頭として年下の」
当たり障りのない訳を言おうとした琳華に対し、珍しく丹辰は真剣な眼差しで首を横に振った。
「我が家は商家の家系。お恥ずかしながら世にあまり出回ってはならない禁制品も時折扱っています。ご聡明な琳華様ならきっと色々とご存じでいらっしゃいますよね」
彼女の勝気な瞳に宿る光るものを見た琳華はとりあえず話を続けて欲しい、とその先を促す。あくまでも秀女の筆頭として耳に入れておきたい、との構え。
「その品の受け渡し現場近くで愛霖様のお屋敷の下男にあたる方の姿が目撃された、とわたくしの家の者が言っていて」
「その品物が禁制の……?」
深く頷く丹辰は綺麗に塗られている紅がよれるのも構わずにぎゅっと唇を引いて頷く。
「伯家は世の裏側をよく見ています。中には我が家を悪く言う方も少なからず、いえ……きっと大勢いることでしょう。商売が大きければそうなることは必然です。それに実際、皇帝陛下の御前で平然と良くないことも……それについては、わたくしにはどうにもできなくて」
それで、と丹辰はまるで意を決したように琳華の瞳を見る。
「取引された禁制品の中に、粉末香があったのです」
