先ほどは時間が来てしまい偉明から詳しく聞けなかったのもあるが見た目で安易に推し量るのならば丹辰の方が要注意である。
部屋に戻った琳華は背中と座面に綿の詰まった椅子に腰を下ろすと梢を見上げた。
「あのね、小梢……偉、じゃなくて冬の御方の話によれば」
重要な話をし始めようとする主人の気配に近くに寄って腰を屈める梢は相変わらず琳華が円筒状の肘置きを膝の上に置いているのを見る。なんとなくそれが、琳華の心の不安さを表しているようだった。
「伯家と劉家に嫌疑がかけられているそうなの」
その声は室内にいる者すら聞こえない、すぐ隣にいる者にしか聞こえない音量で告げられた。
「でも時間が足りなくて、伯家についてしか聞けなかった」
「そうなりますと……いえ、確かにお嬢様に積極的に関わろうとされているのはお二方ですね」
「ええ。でも愛霖様はどうにも違うような……丹辰様もきっと素のわたくしみたいに我を通そうとされる気質を持っていらっしゃるようだからそう見えるだけで」
丹辰も利発なだけでそこまで悪くは考えられない。彼女の気質から積極的なだけに見える。
「冬の御方はわたくしたちのことを見定められていた。その上でお役目を遂行することが可能だと判断されての今日のこの情報」
「では私の方でもこちらの美味しい賄賂でさらに、そこはかとなく下女の方々に……」
「ええ、お願いするわね。特に愛霖様は侍女をつけていないから担当されている下女の方が必要に応じてご様子を見てらっしゃるようだし」
うんうんと小さく頷く梢は主人のそばから離れて「では、さっそく」と偉明から貰って来た包みを開くと二つほどの紙包みを作り始めた。梢が別の手仕事に取りかかった時の琳華は一人で勝手に髪を下ろすなり、自由に自分のやりたいことをする。
自分が梢に頼んだことを彼女が行っている時、無理に手を止めさせてやりかけの仕事を増やしてしまう方が効率が悪い。
つまるところ合理的でないことを周家はあまり良しとしていなかった。
