人にはそれぞれ理由がある。
それでも秀女になる為の試験に愛霖も合格したのだ。
皆が一定の水準、それ以上の能力を持ち合わせている。
「えっと、琳華様にはすっきりとした香りがお似合いになるかとずっと考えていて」
部屋の扉の前にある衝立の奥に招かれた琳華はやはり自分と梢が使っているあの角部屋が布団部屋そのものだったのを再確認しつつ、実家から持ち込んでいるらしい香を選んでくれている愛霖の細い背を見る。
梢のように彼女も華奢だったが骨そのものが細いように見える。どちらかと言うと自分はよく体を動かしているのもあって頑丈だ。日焼けだけはしないように、と口うるさく梢から言われていたので屋敷の庭では髪を下ろして男性物のつばの広い帽子を被らされていたし、外では貴族の年頃の女子がよくやるように薄手の羽織物を頭から被っていることが多かった。
愛霖の首筋は白く、細い。男性視点の好み、と言うのを考えた事などなかったがこうしていると何となく理解する。愛霖は繊細で、綺麗だ。それにどこか守ってあげたいような雰囲気がある。
「よろしかったら使ってください。絹袋に入れて香嚢にしてありますので」
差し出してきたのは手の平ほどの絹の巾着に入った物。これなら火を焚かずとも持ち歩いたりして香りが楽しめる。もちろん、寝台に提げていても良い。
「ありがとう。大切にするわね」
競い合う秀女同士ではなく、年長者としての礼節を重んじるように軽く頭を傾げて礼を言う琳華に愛霖の方が恐縮してしまう。
「もし困ったことがあったら気兼ねなくわたくしに……少しばかりかもしれないけれど力にはなれると思う」
琳華の持つ芯のある気高さに愛霖も頷く。
きちんと整頓されている彼女の部屋を後にした琳華は豪華になった元布団部屋に戻り、出迎えてくれた梢に「劉愛霖様からいただいちゃった」と早速、香嚢を見せた。
そして梢の方も「ぐふふ」と妙な笑い方をしながら細工が豪華になった卓の上、器に山盛りになった桃饅頭を主人に見せる。
「あらあら、うふふ」
廊下までは澄ました顔をしていた琳華もにやにやと口元を緩め、妙な笑い方を梢だけに見せる。
「お嬢様もよい成果がおありになったようで」
「小梢も」
「ええ、はい。それはもう……この饅頭をまた賄賂にして……ぐふふふふ」
