『その秀女、道を極まれり ~冷徹な親衛隊長様なんてこうして、こうよっ!!~』



 秀女たちはその日、初めて東宮――宗駿皇子が住まう宮へと連れて行かれ、とある部屋に収容された。年齢の順なのか琳華は一番最後の列に並ばされる。それからそれぞれに名前が呼び上げられると紗の薄い布が下りている前に進み、最敬礼として膝をついて頭を下げる。

 紗の薄い布の向こうには、宗駿皇子がいる。
 その傍らには侍従と共に偉明も控えていた。

 たかが謁見とは言え何が起きるか分からない。偉明のような官僚と同じ立場の専任の武官が軽装の衣裳で帯刀だけしている理由。護衛としてそばにいても目立ちすぎないがその身軽さから皇子に害を為す者がいればその者の首を即刻、叩き落とす気概があると言うこと。

 「周家琳華様」

 六名ずつが横に並んだ二列、その後列の一番最後。
 呼ばれた琳華が前に進んで皇子の面前で膝をつく。
 花の群れの中で唯一の濃灰色の衣裳に銀糸の刺繍。しかも琳華だけは偉明に連れられた皇子の顔を知っているし、皇子も自分の顔をよく知っている。

 紗の向こうで、皇子が笑った気がした。

 ごく地味な衣裳でしか会ったことがないが今日の琳華はばっちり、勝負服の出で立ち。化粧もはっきりと濃いので薄い布を一枚隔てた向こうでも顔の違いがわかったのかもしれない。

 (でも、この謁見はきっと……)

 琳華は予見する。
 秀女たちはまだ客人の立場。それに琳華以外の十一人全員が読み書き以上の教養が備わっているのだと試験で証明されており、その中からより秀でた女性や皇子の目に留まった女性が正室、側室候補として残るのだが……。

 これは一回目の振るい落としだ、と琳華は感じた。人数は分からないがこの皇子との謁見の後に実家に帰されるのはつらいものがある。
 しかしそれがこの世の現実。
 やる気がある者ならば秀女を管理をしている上級女官に働き口を積極的に聞けば良いだろうが、その先は家柄による。人それぞれ、だった。