あなたは私のオランジェットの片割れ

 蒼士は杏の隣に立つと、スッと背筋を伸ばした。

「杏を助けてくれて、本当にありがとう」

 そう言って深々と頭を下げた。杏も慌ててそれに倣った。

「平野麻友子は、警察に勾留されてる。今後は傷害罪で訴える事になるだろう。手続きや弁護士もろもろは、あとで桐生さんが説明に来てくれるそうだ」

「そうですか、わかりました……あの、蒼士先輩、ひとつだけいいですか?」

「え?」

「俺が命懸けで守ったんです。だから、くずあんの事、もしまた泣かせるような事があったら――速攻で奪いにいきますから」

 斗馬の言葉に一瞬、驚いたような表情になったが、蒼士はすぐに切り返した。

「大丈夫だよ、お前になんてやらねーよ」

 二人はふざけたように睨み合うと、どちらからともなく噴き出したように笑い始めた。止まらない笑い声に、杏はポカンとして二人を見ていた。

 ……笑っているけど、涙が流れそうだと斗馬は思っていた。

「幸せになってくれよ、くずあん」

 蒼士の隣にいる杏を見つめながら言うと、彼女はコクンと頷いた。

「大丈夫、今、幸せだよ。ありがとう斗馬くん」

 その言葉に斗馬は、高校からの長かった片想いが、胸の中でひっそりと幕を閉じたのを感じていた。





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