痛バッグから麻友子が取り出したのは、二十センチほどもある青いカッターナイフ。チキチキと音を立てながら、刃が繰り出される。長く出された刃は、太陽の光を反射させた。
――逃げなきゃ! ハッとした杏は瞬時にそう思ったが、足が動かない。刃物を前にして恐怖で震え上がってしまっていた。
「あんたなんて消えてよ! 死ね! 死んじゃえ! 死ね死ね死ね死ね死ね! 死ねぇ!!」
悲鳴にも似た叫び声を上げながら、麻友子はカッターナイフを振り上げる。次に来る衝撃に怯え、杏は頭を庇いながらぎゅっと目を閉じた。
一瞬の間。
しかし次に来たのは、身体をぐい、と押された強い力。横に押されたせいで体制を崩し、杏は横倒しにアスファルトに投げ出された。
倒れた半身を起こしたと同時に聞こえた、「うっ……!」という、低い呻き声。
杏の目に見えたのは、男性の大きな背中だった。蒼士かと思って息を呑んだが、「大丈夫か?」と言って振り返った声と顔は、斗馬のものだった。
「斗馬くん?! なんでっ……!」
斗馬の肩にはカッターナイフが刺さっていて、着ているシャツに赤い血が染みてゆく。杏を庇って付いた傷だった。
それを刺した当の本人、平野麻友子は地面に座り込み、「やった! やった!」と不気味に笑いながら両手を上げて喜んでいる。多分、杏を刺したと思っているんだろう。錯乱状態だった。
「くず、あん……今のうちに、警察、呼んで……」
「斗馬くん!!」
幸い、心臓からは外れているが、肩からはどんどん血が流れだしている。苦しそうな表情で、ぐらりと斗馬の身体が揺れたかと思うと、杏の方へ倒れてくる。彼を抱きとめながら、杏は叫んでいた。
「誰か! 誰か、救急車を!」
――逃げなきゃ! ハッとした杏は瞬時にそう思ったが、足が動かない。刃物を前にして恐怖で震え上がってしまっていた。
「あんたなんて消えてよ! 死ね! 死んじゃえ! 死ね死ね死ね死ね死ね! 死ねぇ!!」
悲鳴にも似た叫び声を上げながら、麻友子はカッターナイフを振り上げる。次に来る衝撃に怯え、杏は頭を庇いながらぎゅっと目を閉じた。
一瞬の間。
しかし次に来たのは、身体をぐい、と押された強い力。横に押されたせいで体制を崩し、杏は横倒しにアスファルトに投げ出された。
倒れた半身を起こしたと同時に聞こえた、「うっ……!」という、低い呻き声。
杏の目に見えたのは、男性の大きな背中だった。蒼士かと思って息を呑んだが、「大丈夫か?」と言って振り返った声と顔は、斗馬のものだった。
「斗馬くん?! なんでっ……!」
斗馬の肩にはカッターナイフが刺さっていて、着ているシャツに赤い血が染みてゆく。杏を庇って付いた傷だった。
それを刺した当の本人、平野麻友子は地面に座り込み、「やった! やった!」と不気味に笑いながら両手を上げて喜んでいる。多分、杏を刺したと思っているんだろう。錯乱状態だった。
「くず、あん……今のうちに、警察、呼んで……」
「斗馬くん!!」
幸い、心臓からは外れているが、肩からはどんどん血が流れだしている。苦しそうな表情で、ぐらりと斗馬の身体が揺れたかと思うと、杏の方へ倒れてくる。彼を抱きとめながら、杏は叫んでいた。
「誰か! 誰か、救急車を!」


