「でも、後悔はしていないし、契約なんて事も関係ない。杏を、愛してる」
杏の瞳からは、大粒の涙が溢れていた。それは、幸せの涙。蒼士は彼女の頬に手を触れ、それを拭う。
「愛してる……」
囁くようにもう一度言いながら唇に落とした、優しいキス。
「私も、蒼士さんを愛しています」
蒼士は立ちあがり、杏を両手で抱き上げた。まさかお姫様抱っこをされるとは思っていなかったから、「きゃ!」と驚いた声を出してしまった。
「ソファより、ベッドの方がいいだろ」
返事を待つ間ももどかしいように、蒼士は歩き始めた。
もう杏には、それを拒否をする気持ちは少しも無かった。蒼士の首に腕をまわし、ギュッと抱きつくと、愛おしさがこみ上げる。
「あ……ドラマ、止めないと……」
「そのままで大丈夫。終われば勝手に止まるようになってる」
テレビでは丁度、苦難を乗り越えた蒼士とヒロインが抱きしめあっているシーンが流れていた。
杏がテレビを気にしているのを遮るように、蒼士はキスをする。杏はまたゆっくりと目を閉じた。
身体が溶けてしまいそうだった。甘い声、淫らな音。触れられた場所が熱を帯び、身体の芯が沸騰しそうだった。はく息も吸う息も熱く、抱きしめ合うとそのまま溶けて混ざり合ってしまうのではないかと錯覚した。
離れるのが切なくて、何度も何度も求め合った。
いつの間に眠ってしまったのか、杏は覚えていない。部屋に差し込んだ朝の光で目が覚めると、眠った蒼士に抱きしめられた腕の中だった。
彼の寝顔を見ていると、胸に幸せが滲み出てくる気がする。柔らかくて温かい、何かが。
(こんなに幸せで、いいのかな……)
蒼士の腕の中でずっと、幸せに溺れていたい……。
◇◇◇


