「……ちょっと思ってたんですけど、もしかして蒼士さんって、甘党ですか?」
杏の言葉に蒼士はフレンチトーストを頬張ったまま、顔を赤くした。口の中のものを慌てて飲み下し、少し咳き込む。
「ちょっと、じゃなくて実は凄く、甘党。仕事が立て込んで疲れると、ホールでケーキ買って食べたりするくらい」
「そんなに?!」
「そんなに」
頷きながら、蒼士はフレンチトーストをまた口に運んだ。今度のも大きい。
「酒も飲むけど、つまみにチョコレート食べたりとか、締めにパフェ食べに行く事もあるよ」
「締めにパフェ……」
さらっと言っているけど、そこまでいくと筋金入りの甘党だ。
イケメンで芝居に真剣で、普段はストイックに生活しています、みたいな顔してるのに、本当は超絶甘党なんて。ギャップがすごい。
こんな事、前に見たプロフィールの何処にも載ってなかった。
なんだか面白くなってしまい、杏が吹き出すように笑うと、恥ずかしくなったのか、ちょっとムッとして「いいだろ、別に」なんて言ってる。顔が赤い。
「ふふふ。ただ、可愛いなあって思って」
蒼士は突然、自分のお皿を持ってすっと立ち上がった。お皿を見ると、もう食べ終わって空になっていた。流しに片付けてくれるのかな、なんて思っていると、蒼士は杏へ歩み寄り耳へ顔を近づけた。
「――杏の方が、可愛いよ」
囁かれた甘い言葉。
驚いて耳を押さえて蒼士を見ると、真っ赤になった杏を満足そうに笑って見ていた。
「えっ……! な、ちょっ……!!」
甘く低い声がまだ耳に残っていて、言葉が上手く出てこない。そんな杏を置き去りにして、蒼士はお皿を流しでサッとゆすぎ、食洗機へ。そして「ごちそうさま! 美味かった! じゃあ、行ってきまーす!」と、仕事へ行ってしまった。


