あなたは私のオランジェットの片割れ

 翌週の日曜日、午前十時。

 杏と蒼士はそれぞれ呼び出され、劇団本社のミーティングルームにいた。二人並んで座らされ、長机を挟んだ向かい側には、マネージャーの桐生の姿。

 付き合いの短い杏ですらわかる程、桐生は怒りのオーラをまとっていた。

 桐生は、机の上に置いておいたファイルの中から、二枚の紙を取り出すと二人の目の前によく見えるように置いた。

「――これ、読まなくても何が書いてあるかわかるよね」

 低い冷静な声で桐生は言った。

 二枚のうちの一枚は、白黒に印刷された写真。もう一枚は、でかでかと見出しが書かれた、週刊誌のスクープ記事のようだ。

 確かに、写真と見出しを見れば、記事を読まなくても何が書いてあるかだいたい分かる。写真は男女が河原の橋の下でキスをしているのを、望遠カメラで撮ったもの。

 女性の顔はぼかしてあるけど、どう見ても杏だった。心当たりもある。男性の方はもちろん、東雲蒼士。二人の向こうにぼんやりと写っているのは、斗馬の姿。

 嬉々として書かれた(杏にはそう感じた)見出しには、『今度こそ! 熱愛発覚!! 真昼橋の下でチュー!』なんて俗っぽく書かれていた。

 斗馬もその場にいたのはどうやらバレていないみたいだ。良かった。

「水曜日発売の週刊誌に乗るそうです。残念ながら劇団側でもストップをかける事は出来なかったわ。明日はワイドショーが賑わいそうよ。……何か、弁明ある?」

 桐生の言葉に、杏は震えあがってしまっていた。

 (なんて事をしてしまったんだろう……! 劇団や蒼士さんと斗馬くんにも、大変な迷惑をかけてしまった。自分の会社でも問題になってしまうかもしれない)

 弁明なんて無い。杏はうつむいて肩をすぼめ縮こまるが、消えて無くなれはするはずもなく。ぎゅっと目を閉じ、桐生の次のお叱りの言葉に備えた。