あなたは私のオランジェットの片割れ

 それが、杏と斗馬だとすぐに分かった。仲良さそうに笑っているのが見える。

 なんだかイライラした。どうして杏の隣にいるのが自分じゃないのか、とか、そんな事を考えてしまい、またイライラ。

 瞬間、蒼士は対岸に向かって走り出していた。川を渡るには、上手にある歩行者用の橋を使うしかなくて大回りになるが、そんなのはどうでもよかった。身体が勝手に動いていた。

 衝動。こんな事は初めてだった。

 心がもやもやする。胸がピリピリと痛むような気もする。二人のところへ――杏の隣へ行けば、解消されるのだろうか。

 まるで、お気に入りのおもちゃを取られた子どもの気持ちなのか。でも、全く違うとも思う。とにかく、杏を誰にも渡したくなかった。この胸の痛みと熱さは……。

「――ど、どうしたんですか、蒼士先輩!」

「え? 蒼士さん?!」

 杏と斗馬は同時に声を上げていた。それもそうだ。さっきまで、蒼士は対岸にいると思っていたのだから。

 蒼士は二人の問いには答えず、杏に近づくとその腕を掴んだ。そしてそのまま、川下の方へと歩き出す。

「えっ?! 蒼士さん、何ですか? どうしたんですか?! 撮影は――」

 驚いた杏が蒼士に聞くが、彼は答えずにどんどん進んで行く。掴まれた腕が少し痛い。

 やっと止まったのは、橋の下に来た時。ずっと日向にいたから、日影が心地いい。気温は高いけど、風が吹くと少しだけ涼しかった。

 そこで蒼士はやっと、杏の腕を離してくれた。

「――蒼士さん、一体どうしたんですか? 撮影は……?」

「……」

 怒っているような雰囲気に、杏は驚いてしまう。だって、彼を怒らせるような理由が見つからない。

「杏……」

 蒼士は杏を抱き寄せた。ぎゅうっとされた圧力。蒼士の腕の中は、温かくて優しくて、安心する。だけど、ドキドキと心拍数は上がってゆく。