あなたは私のオランジェットの片割れ

 お店の料理はピザもパスタも、家庭的な味でとても美味しかった。昼間はあんなに食欲がなかったのに、全部ぺろりと平らげてしまった。

 お腹も満たされ、ワインのせいか、ちょっと良い気分。デザートは何かな、なんて考えていると、斗馬が言った。

「――お菓子レッスン、終わっちゃったんだな」

「ああうん、あんな事があったら、仕方ないよね……」

「まあな、そうだけど」、そう言いながら斗馬は自分の取り皿にあったピザの残りをパクリとひとくちで食べた。

「一回しか行けなかったけど、俺、結構楽しかったんだよ」

「私も! 楽しかった……」

 最初は嫌だったけど、もともと大好きなお菓子作りだ。緊張しながらもやったレッスンは自分も勉強になったし、蒼士にからかわれたりもしたけど、全部ぜんぶ楽しくて。

 それに、お菓子が出来た時や食べた時に見た、蒼士の嬉しそうな顔……。

 たった二回しか出来なかったけど、思い出すと胸がぎゅっとする。本当に胸が痛いような気がして、杏は自分の胸に思わず手をあてた。

 なぜだか、蒼士の顔ばかり思い出してしまう。

 店内に流れるBGMのクラシック。お客の会話を邪魔しないように音量は抑えてあるが、バイオリンの独奏になるとよく聞こえる。そのうちにドルチェのジェラートが運ばれてきて、杏と斗馬はしばらくまた、食事に集中した。

 桃のジェラートも甘くて冷たくて美味しい。味わっていると、先に食べ終わった斗馬が杏をじっと見つめていた。