あなたは私のオランジェットの片割れ

 その返事もしなくちゃいけないし、事情を知っている誰かに、話を聞いて欲しかった。おりしも今日は金曜日。残業の予定も無い。

 杏は『OK』の返事を送信した。

 斗馬と待ち合わせをしたのは、会社のある駅から二つ隣の駅。その駅前から少し離れた裏通りにある、ピザとパスタが美味しいというイタリアンなお店。地図アプリを見ながらそのお店に着いた時は、立派なリストランテみたいな佇まいで、会社帰りの自分の服装で大丈夫なのか不安になったけど。

 お店の中は外観と同じレンガ造りの壁やバーカウンターがあり、柔らかい暖色の間接照明が温かい雰囲気で、居心地が良さそうだった。

 斗馬はフロアから少し離れた奥にある、個室を予約してくれていた。

 杏がサーブされた水を飲んで待っていると、斗馬もすぐに現れた。キャップを深く被りマスクをしていたが、それを取り去ると、いつもの斗馬の明るい笑顔。

 なんだか、ホッとする……

「――久しぶり、くずあん。怪我したって聞いたけど、大丈夫か? なんか……元気ないみたいだけど」

「う、ううん、全然元気だよ。傷もかすり傷だしもう治ってきてる」

 言いながら杏は慌てて、頬の傷跡を指示した。斗馬は安心したように頷くと、杏の対面に座った。

 元気がないのは当たりだった。……どうしてか、落ちこんだようなため息ばかり出てしまっていたから。

 (まさか斗馬くんに指摘されるとは思わなかった……)

 その後は、斗馬があらかじめ予約していたコース料理が届き始め、しばらく二人でたわいもない話と食事をした。

 告白の事は、斗馬は触れないでくれているようだった。事件もあったし、いろいろ事が落ち着いて杏が言い出すのを待ってくれているのかもしれない。