あなたは私のオランジェットの片割れ

 蒼士は、『女優とは友人の付き合いで、マスコミ報道は事実無根。夫の俳優と三人で仲良くさせてもらっている。写真は、事務所が契約しているマンションで、時々、仮眠をとるのに利用している。女性はたまたま同じマンションに住んでいる知らない人。同じ部屋から出てきたわけではない』

 両者から完全否定の声明が出たので、これ以上騒ぎが大きくならないで済みそうだ。社内の緊急会議の方も、CMはこのまま継続して放映するという方向で話がまとまったようだった。

 杏に関しても、社内会議では特に問題にはならなかったみたいだ。

 ホッとした。蒼士に迷惑をかけたくなかったから……。

 ワイドショーも和田の情報収取も落ち着き始めたので、杏は昼休みに桐生に連絡してみる事にした。まだ対応に忙しいかもしれないが、次のお菓子レッスンの事もある。

 それに、蒼士の様子も聞けるかもしれない……そんな邪な想いもあった。

 呼び出しコール二回で桐生はすぐに出てくれた。

『――杏ちゃん? 丁度よかったわ、今、電話しようと思ってたの』

 思っていたより元気な声で安心した。マネージャー歴長いみたいで、今までもいろんな芸能人のこういう騒動も処理してきただろうから、慣れてるのかもしれない。

 でも、電話しようと思ってた、って何だろう?

「お菓子レッスンの事ですか?」

『うん、まあ、それもあるけど……詳しくは、そちらに行ってから話すね』

「えっ?」

『午後いちでほほえみ製菓さんに訪問のアポとってあるの。他にも行く会社たくさんあってね、まあ所謂、今回の騒動のお詫び行脚ね! あはははは!』

 桐生は大きな声で、自虐的に笑った。

『とにかく、午後に蒼士と行くから、話はその時にね。杏ちゃんも同席するようにお願いしてあるから!』

「ええっ?!」

 驚いているうちに電話は切れてしまった。

 でもこんな時だけど、蒼士に会えると思うと心が少し弾んだ。





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