あなたは私のオランジェットの片割れ


「――と、まあ、今はそんな感じ。せっかく作った創業記念CMが無くなるか存続か、揉めに揉めているってところかな!」

「そう、なんですね……」

 杏は和田が説明してくれている間、パソコン画面に映された写真から目が離せなかった。まるで目が固まってしまったように凝視する。

 某女優とか和田は言っていたが――

 (でもこれって、私、じゃない?!)

 背景に映っているマンションはぼかしてあるが、外観の感じからお菓子レッスンをしているマンションだし、女優だと言われている女性の姿は、ピントが合っていなくてぼやけているが、服装の色や背格好が、先週のレッスンの時の自分とよく似ている。

 (どうしよう……)

 お菓子レッスンの事を知っている上司に相談した方がいいのか、それとも黙っている方が得策か。ぐるぐると迷っていると、先に課長から声を掛けられた。レッスンの事を知っている一人だ。

 小さいミーティングルームで、蒼士の恋愛関係を知っていたのか、という聞き取りだったが、知らなかったと答えた。実際、本当に何も知らないし。

 杏は、マンションはレッスン用の所で、写真の人物が自分だと思うと伝えた。課長は少し考え込んでいたが、「わかった」と言ってくれた。これから始まる緊急会議で、その旨伝えてくれるそうだ。

「葛原は特に悪い事はしていないんだから、心配するな」と、課長はそう言ってくれたが、CMや杏がどうなるかは、わからなかった。

 課長たちが会議に入り、落ち着かないながらも暫く仕事をしていると、隣の和田がまた杏に話しかけてきた。

「――ねえ! 二人から、声明出たよ!」

 和田はそう言いながら自分のパソコン画面を指さした。どうやら仕事もしないでずっと、熱愛報道の情報を追っていたらしい。

 若干呆れながら、画面に視線を向ける。そこには、東雲蒼士と相手の女優それぞれが発表した声明が表示されていた。

 女優側は、『東雲蒼士とは友人で報道のような間柄ではない。夫婦で親しくしている。写真は身に覚えがない』