あなたは私のオランジェットの片割れ

 その時、ピンポンと、部屋のインターホンが鳴った。

(誰だろう? 和田先輩がまた来てくれたのかな?)

 熱でダルい体を起こし、インターホンのモニター画面を見ると、そこに映っていたのは、黒いキャップに黒縁メガネ。顔の下半分はマスクで覆われている男の人。誰だか全然分からない。

「どちら様ですか?」

 インターホンのマイク越しに尋ねると、『俺』と言いながら、男はメガネを上げて、マスクを下にして顔を見せた。

 なんと、そこに立っていたのは東雲蒼士。

「え、ええっ?! どうして?!」

 驚いて思わず声を上げると、蒼士はメガネとマスクを戻しながら言った。

『誰かに見られるといろいろとマズいから、とりあえず中に入れて』

「ああ、うん、はい……!」

 杏は慌てて玄関を開けた。


 ……自分の部屋に、東雲蒼士がいる現実が受け入れられない。熱があるから妄想なのかとすら思う。

 だけど現実に、杏の目の前には彼が座っている。

 蒼士は何やら、ガサガサとビニール袋を持っていた。近所のコンビニのマークが付いている。

「熱出したって聞いたから、これ、お見舞い」

 言いながら蒼士はビニール袋を差し出した。中を見ると、栄養が補給出来る飲むゼリーや、果物の入ったゼリーにプリンにヨーグルト。蒸しパンなんかもいろいろどっさり入っていた。

「ありがとうございます。でも、誰から聞いたんですか?」

「マネージャーの桐生さん。明日のお菓子レッスンが中止だって言ったから、理由を聞いたら杏が熱出したって」

 そういえば、帰ってきて寝るまでに、桐生さんにお菓子レッスンキャンセルの連絡をしたんだった。こんな体調では、明日もどうなるか分からなかったし。

 なるほど納得。でも……