『――お買い物をされている皆様、こんにちは、東雲蒼士です。今日は私がアンバサダーをしているキャンペーンのお知らせを――』
それは、コンビニに流れる店内放送CMだった。
滑舌のいい、よく通る声。
目の前には斗馬がいて、自分の返事を待っているのに、杏の耳は店内放送の彼の声を拾っていた。
ダメだ、ちゃんと考えなきゃ、とは思うのに、ずっと蒼士の声ばかり耳に入ってくる。
しかし、蒼士の短い店内放送が終わると、不思議と気持ちがすっかり落ち着いていた。
杏は自分の気持ちを正直に話し始めた。
「……あのね、斗馬くん。私は斗馬くんのこと、ずっと友達だと思ってた。正直今は、好きだって言われてもよく分からない。だから少し、考える時間をもらえるかな」
「それは……ダメだってこと、だよな……」
「ううん、違う。私も、真剣に考えてみるから、だから時間をくださいって事だよ。私のこと、好きだって言ってくれて、ありがとう」
「……わかった」
斗馬は、胸に手を当てて、まるで痛みを堪えるようにそう言った。
杏がコンビニを出ると、遠くで雷が鳴っている音が聞こえた。
あんなに晴れていたのに、暗い色の雲が空を覆っている。暑かった空気も、湿気を含んだ低温にかわっており、どうやらじきに、ゲリラ豪雨にでもなりそうだ。
斗馬はもう少しコンビニに残ると言ったので、今度は杏が先に帰る事にした。
光はまだ見えないが、また、雷の音が聞こえた。徐々に近付いてきているのを感じ、杏は駅に向かって足を速めた。
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