「好き、なんだ」
一瞬、杏はさっき言っていたチーズケーキのことかと思った。だけど、斗馬の真剣な眼差しに、そうじゃないと分かる。
「くずあんのことが、好きなんだ」
もう一度、ハッキリとそう言った。
「高校の時に、くずあんが作ったオランジェットを食べてから、ずっとずっと、好きだった。でも、何も言えないまま卒業しちゃって……こうして再会する前は、他の子と付き合ったりもしたけどなんか上手くいかなかった」
コンビニの自動ドアが開いた音がして、おばあちゃんと小学生くらいの孫が手を繋いで入ってきた。店内に、お菓子を選ぶキャッキャとした楽しそうな笑い声が響く。
斗馬は優しい顔でそれを見てから、言葉を続けた。
「再会して分かった。やっぱ、俺、くずあんが好きだ。お前が、一番好きなんだ」
ドキドキしないと言えば、嘘になる。斗馬は顔だけではなく、優しくて良い人。今はまだ下積みだけど、俳優としてデビューしたらきっと人気になるだろう。
でも……
(どうしてだろう。今、蒼士さんの顔が浮かんだ)
「くずあん、俺と付き合ってくれない? ……ダメかな」
「ええ、と……! え……ぁの……」
斗馬の告白に、杏はどう返事をしたらいいのか分からなかった。
だって、斗馬は友達で。それ以上でも、以下でもなかったから……。急にそんな事を言われても、どうしていいのか、思考が停止してしまう。
杏が少しパニックになっていると、突然、耳に飛び込んできた声――


