あなたは私のオランジェットの片割れ

 思いがけない話に、杏は驚いていた。当時はそんな事には気付いていなかった。杏が恋愛ごとに疎かったからかもしれないが。

 斗馬の好きだった人って誰だったんだろう……杏がそれを聞こうと思ったら、隣で黙々とケーキを食べていた桐生が、パンパンと二回手を叩いた。

「恋バナで盛り上がってるところ悪いんだけど、みんな食べ終わったなら、そろそろ解散でいいかしら? 私この後、劇団の事務所で会議があるのよ」

 鶴の一声で立ち上がり、みんなで使った物を片付けて、今日はそれでおしまいになった。斗馬の好きだった人が誰なのか杏は気にはなったけど、話が途切れてしまったのでそれ以上は聞くことはしなかった。

 まあ、高校の頃の想い人のことなんて、今更聞かれても困るだろうし。

 マンションを出る時、桐生に車で送ると言われたが、杏は電車で帰る事にした。今日は仕事も休みの土曜日の昼間だ。せっかく出て来たんだから、駅のショッピングモールでランチを食べて少しブラブラするのもいいかなと考えていた。

 蒼士はマンションで仮眠をとってから帰ると部屋に残り、桐生は車で劇団の事務所へ。斗馬も電車で帰ると言っていたが、杏とは時間をずらしてマンションを出ろと桐生に言われたので、先に帰った。