「――お、俺だって、くずあんの味、大好きだ!」
自分の分のパウンドケーキはすっかりお腹に片付けてしまった斗馬が話に割って入ってきた。何故か少し焦っているみたいだった。
「あ、ありがとう……」
驚いたけどお礼を言うと、斗馬は満足そうに笑った。
「くずあんのお菓子で一番好きなのは、オランジェット! 高校の時にバレンタインでよく作ってただろ? 覚えてる?」
「あー、作ってた! 斗馬くん、よく覚えてたね、そんな事」
「だって俺、初めて食べた時、美味くてマジで感動したもん」
「大袈裟過ぎるよ。でも、高校の頃かぁ……懐かしいね」
みんなで同じ制服を着て学校に通い、友達とバカな事もたくさんした。泣いたり笑ったり怒ったり。もう十年くらい前の事なんだという事実に驚いてしまう。
斗馬も同じような事を想ったのだろう、懐かしそうに目を細めた。
「そうか、二人は同じ高校の同級生だったな。高校の時の二人って、どんなだったの?」
蒼士の突然の質問に、杏と斗馬は目を見合わせた。
「くずあんは今と同じで、お菓子ばっかり作ってました!」
ははっと蒼士が笑う。今も全然変わってなくて、杏は少し恥ずかしくなった。
「斗馬は? 昔もこんな生意気な感じ?」
「えー! 生意気って! 酷いな、蒼士先輩!」
「えっと、斗馬くんは、すっごいモテてました」
「マジか。じゃあ、彼女とかつくりまくってたとか?」
「それは、えーと……」
(あれ? そういえば高校の時の斗馬くんに、彼女っていたっけ……?)
どうしても思い出せなくて、杏は斗馬に視線を向けた。
「高校の時は、彼女は作らなかったんです。……ずっと片想いしてたから」
斗馬は杏から視線を外し、俯く。頬が少し赤かった。


