「へえ、そうなんですね」

「そうなんですねって、葛原さんって本当にお菓子意外は興味ないんだね」

 そんなことはないけど……と、杏が反論をしようとしたら、ゴホン、と大きな咳払いが聞こえた。

 声の方向へ顔を向けると、課長が渋い表情でこちらを見ている。どうやらヒートアップした和田の声が大き過ぎたようだ。

 和田も杏も、まずい! と思っのか、仕事の方へ戻ろうとした。そこへ課長の声が。

「創立記念CMの話題で盛り上がっていたなら丁度いい。葛原さん、午後に予定している撮影に同行してくれないか」

 驚いて、杏と和田は同時にえっ! と声を上げてしまった。

「広報の方から、総務課で誰か雑用に出せないかと言われてるんだ。何かあっても対応できるように私も行くが、あとひとり同行者が欲しかったんだ。俳優に興味がないなら葛原さんが適任だろう」

 課長曰く、俳優に好奇心丸出しでキャッキャされると撮影に支障が出るし、相手の機嫌を損ねたりしたら大変だ。葛原みたいに興味が無い方が仕事もしっかりしてくれるだろう。

 ……ということだった。

 和田は自分が行きたかったようでブツブツ文句を言っていたが、課長が取り合わなかったので結局、杏に決まってしまった。





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