あの時の甘い声、眼差し。香水を何か付けているのだろうか、近付いた時、いい匂いがした……そんなことを思い出してしまって、またドキドキ。それを誤魔化すために早口でいろいろ喋り続けていると、斗馬が途中で口を挟んだ。
「なんか、随分楽しかったみたいだな」
「え? まあ、お菓子作るのは好きだから、つまらなくはなかったけど……」
「始めはあんなに嫌がってたくせに……」
急に非難めいた拗ねた口調になった斗馬。杏にはその理由は分からなかった。
「くずあん、ちょっとさ、一回電話切っていい? 後でまた掛けなおすから」
「う、うん、別にいいよ」
杏が、なんだろう? と思っているうちに斗馬との通話は切れてしまった。
次にまた斗馬から連絡が来たのは、杏が夕飯を食べている時だった。冷蔵庫の残り物で作ったケーク・サレを、ストレッチの前に仕込んで焼いたのが今夜の夕飯。
ケーク・サレは野菜やチーズを入れて作る甘くないケーキだ。普通のケーキみたいにデザートではなく、おかずやおつまみとかで食べるもの。わりと何でも入れられるから、冷蔵庫の残り物整理にとても便利だ。
ダイエットでストレッチをしたのが無意味になった、という事には目をつむろうと頬張ったケーク・サレを杏は慌てて飲み下し、スマホをタップした。
「――斗馬くん? 遅かったね。一体、どうしたの?」
『ああ、悪い、くずあん。思ったより時間かかっちゃった』
「何が?」
斗馬はすぐには答えなかった。スマホの向こうで少し笑っているような気配を感じた。
「なんか、随分楽しかったみたいだな」
「え? まあ、お菓子作るのは好きだから、つまらなくはなかったけど……」
「始めはあんなに嫌がってたくせに……」
急に非難めいた拗ねた口調になった斗馬。杏にはその理由は分からなかった。
「くずあん、ちょっとさ、一回電話切っていい? 後でまた掛けなおすから」
「う、うん、別にいいよ」
杏が、なんだろう? と思っているうちに斗馬との通話は切れてしまった。
次にまた斗馬から連絡が来たのは、杏が夕飯を食べている時だった。冷蔵庫の残り物で作ったケーク・サレを、ストレッチの前に仕込んで焼いたのが今夜の夕飯。
ケーク・サレは野菜やチーズを入れて作る甘くないケーキだ。普通のケーキみたいにデザートではなく、おかずやおつまみとかで食べるもの。わりと何でも入れられるから、冷蔵庫の残り物整理にとても便利だ。
ダイエットでストレッチをしたのが無意味になった、という事には目をつむろうと頬張ったケーク・サレを杏は慌てて飲み下し、スマホをタップした。
「――斗馬くん? 遅かったね。一体、どうしたの?」
『ああ、悪い、くずあん。思ったより時間かかっちゃった』
「何が?」
斗馬はすぐには答えなかった。スマホの向こうで少し笑っているような気配を感じた。


