クッキーの焼き上がりは上出来。甘くて美味しそうな香りが、部屋いっぱいに広がっている。マーブルや市松模様も、蒼士は作るのに手こずっていたが綺麗に出来ている。
さっきまでの、杏の微妙な気持ちも吹き飛ばすように、蒼士は嬉しそうな笑顔を見せた。
「凄いな、こんなに綺麗に出来るんだ。ちょっと感動した」
シンプルなお皿に盛り付けると、ますます見栄えも良くなった。市松模様のクッキーをひとつ摘んでパクリ。「味もサイコー!」なんて言いながら、蒼士は子どものように喜ぶ。
「ねえ、桐生さん! クッキーと俺の写真撮って、SNSに載せたい!」
「そうね、配役の発表はしてあるから、ドラマのいいアピールになるわね」
早速、蒼士がクッキーのお皿とスマホを持ってポーズをいろいろとり始める。どうやら自撮りするらしい。
杏は桐生に促され、写真に写り込まない場所へ移動した。
「――出来た! 桐生さん、ちょっと確認してよ」
撮影が済むとすぐには投稿せず、一旦マネージャーの桐生が確認する。今はいろいろとSNSで問題が起こるからその辺は慎重だ。SNSへの投稿が済むと、時間はそろそろお昼になろうとしていた。蒼士はこの後、仕事があるという。
作ったクッキーは、蒼士と杏ではんぶんこ。蒼士はもうお昼ご飯を食べる時間がないらしく、それをご飯代わりにするつもりのようだった。ほんと芸能人は大変だ。
「ところで、次はどんなお菓子作りたいですか? 何かリクエストがあれば……」
帰り支度を済ませたところで、杏は蒼士に聞いてみた。
今回、簡単なクッキーだったとはいえ、ここまでちゃんと出来たから、次はもう少しレベルアップしてもいいかな、と考えていた。それに、やる気もあるみたいだから、蒼士の作りたいものを取り入れてもいいかもとも杏は思っていた。


