十分ほど歩いてカフェに着いた頃には、メイクが崩れてないか心配になるくらい汗をかいていた。
入り口の、カウベルが付いた古めかしい扉を開けると、クーラーでよく冷やされた空気が流れてきて一気に汗が引く。杏の存在に気付いた店員さんに「お好きなお席へどうぞ」と促され、少し中へ入り斗馬を探した。
クラシカルな赤い革張りのソファで、四人一組のボックス席が並ぶ店内は、あまりお客は多くない。カフェというより昔ながらの喫茶店、といった雰囲気のお店だ。その一番奥の席でこちらを向いて座っていた斗馬が手を上げて、キョロキョロしていた杏を呼んでくれた。
「遅くなってごめんね、斗馬くん。少し道に迷っちゃって」
地図アプリを使っていたが、大通りから外れたこのお店への道は入り組んでいて分かりにくかった。もしかしたら斗馬は、わざとそういう店を選んだのかもしれない、と杏は思った。デビュー前とはいえ一応俳優だから、あまり人目につかないように。
「いや、こちらこそ。急に呼び出してごめんな、くずあん」
そう言った斗馬の隣に座っていた女性が、杏を見て会釈。杏も会った事がある、先日のCM撮影で東雲蒼士と一緒に来ていたマネージャーだった。
「突然同席していてすみません。先日もお会いいたしましたが、東雲蒼士のマネージャーをしております、桐生と申します」
桐生は杏が自分のことを覚えていないと思ったのか、丁寧に自己紹介し、もう一度頭を下げた。杏も慌ててペコリ。
だけど、どうして蒼士のマネージャーがいるのか。杏が斗馬に説明を求めると、彼は困ったように眉を歪めて言った。
入り口の、カウベルが付いた古めかしい扉を開けると、クーラーでよく冷やされた空気が流れてきて一気に汗が引く。杏の存在に気付いた店員さんに「お好きなお席へどうぞ」と促され、少し中へ入り斗馬を探した。
クラシカルな赤い革張りのソファで、四人一組のボックス席が並ぶ店内は、あまりお客は多くない。カフェというより昔ながらの喫茶店、といった雰囲気のお店だ。その一番奥の席でこちらを向いて座っていた斗馬が手を上げて、キョロキョロしていた杏を呼んでくれた。
「遅くなってごめんね、斗馬くん。少し道に迷っちゃって」
地図アプリを使っていたが、大通りから外れたこのお店への道は入り組んでいて分かりにくかった。もしかしたら斗馬は、わざとそういう店を選んだのかもしれない、と杏は思った。デビュー前とはいえ一応俳優だから、あまり人目につかないように。
「いや、こちらこそ。急に呼び出してごめんな、くずあん」
そう言った斗馬の隣に座っていた女性が、杏を見て会釈。杏も会った事がある、先日のCM撮影で東雲蒼士と一緒に来ていたマネージャーだった。
「突然同席していてすみません。先日もお会いいたしましたが、東雲蒼士のマネージャーをしております、桐生と申します」
桐生は杏が自分のことを覚えていないと思ったのか、丁寧に自己紹介し、もう一度頭を下げた。杏も慌ててペコリ。
だけど、どうして蒼士のマネージャーがいるのか。杏が斗馬に説明を求めると、彼は困ったように眉を歪めて言った。


