あなたは私のオランジェットの片割れ

 暫く無心で草むしりをしていると、道の向こうから祖母の姿が見えた。方向的にどうやら、駅の近くの商店街へ行っていたみたいだ。手に長ネギの飛び出たエコバッグを持っている。

 祖母も杏に気が付くと、家へは入らずこちらへ来てくれた。

「おかえりなさい、おばあちゃん」

「ただいま、杏。そんな事より!」

 祖母は少し、あわてているようだった。

「今、商店街で聞いたんだけど。テレビでよく見る芸能人みたいな人が、杏を探しているって……」

 心臓が口から飛び出るんじゃないかと思った。杏はそうならないように口をぎゅっと強く閉じた。だけど、身体が震えている。鼓動が速まる。

 芸能人みたいな人……きっと、蒼士に違いない。会いたい、という想いと、ここを去らなければ、という思いが同時に湧き上がる。

 杏の様子に、祖母は何かを確認するように、言った。

「お節介かなって思ったけど、一応ね、あなたの事は話さないように皆に口留めしてきたけど。でも、人の口には戸が立てられない。ここが見つかるのも時間の問題だと思うよ」

 その言葉に、杏も同意するように頷く。

「――杏が、話してくれるまでは聞かないでおこうと、おばあちゃん思ってた。でも、もし助けが必要なら、今、話してくれないかしら。可愛い孫と曾孫の為なら、なんでもするわよ!」

「おばあちゃん、ありがとう……」

 祖母の優しさに、涙が溢れた。

 ずっと、自分は強くならなければいけないと思っている。だけどまだまだ弱くて、こうして助けてくれようと手を差し出してくれた祖母の優しさが、とても嬉しい。張りつめていた心を、そっと撫でられたようだった。