あなたは私のオランジェットの片割れ

 掃除機をかけ終わったが、祖母はまだ帰らなかった。どうせどこかで立ち話でもしているんだろう。

 活動的で社交的な祖母は、小さな町内での友達も多い。お裾分けをし合ったりと、ご近所とも友好的に付き合っているようだ。

 それに一役買っている家庭菜園が、家の向かいにある。近所の農家さんから間借りしているそうだ。五坪ほどの小さな畑だが、そこで祖母は様々な野菜を育てていた。

 杏は他にやる事もなさそうなので、その畑の手入れをする事にした。草むしりしたり、食べ頃の野菜を収穫したり。畑仕事なんていままでした事はなかったが、祖母に教えられてやるうちに楽しくなっていた。

 汚れてもいい服装に着替えて、畑へ。少し雑草が増えているみたいだったから、草取り用のクワで掘り起こして抜いていく。前にしゃがんでむしっていたら、妊婦だからしゃがんじゃダメだと祖母に叱られてしまった。

 黙々と草を抜いていると、つい余計な事を考えてしまう……

 なんだか、あっという間の二ヶ月だった。今では蒼士と二人で暮らしていた事が、まるで夢だったかのように遠い。

 本当は、ここに居るのもすぐに見つかってしまうと思っていた。でも……蒼士はいまだに現れない。

 それが、答えなんだと思う。

 自分で選んだ事だけど、やはり少し悲しい。

 知らないうちに瞳に溜まっていた涙を、袖でぐいと拭った。妊婦になってから、涙脆くなってしまって困る。

 それに、いつまでも思い悩んだって仕方ない。これから生まれる子供の為に、強くならなくちゃいけないんだ。幸い、悪阻も軽いみたいだし、健康には問題がない。きっとお腹の子も健やかに育つだろう。だから大丈夫、一人でも頑張れる。

 弱気になりそうになると何度も、杏はそう自分に言い聞かせていた。